PNFとは?

PNFは、患者さんの体に寄り添って、脳と神経と筋の繋がりを改善し、身体の動かし方の感覚を取り戻します。

P:proprioceptive(固有受容性(器)・固有受容感覚) PNFについて

1940年代にアメリカの医師と理学療法士によって開発された運動療法の1つで、その哲学の基本は「全ての人間は障害を持つものも含め未開発の潜在能力を持つ」(Dr. Herman Kabat)という前提の上に成り立っています。
またPNFによる施術は常にポジティブで、対象者様にとって身体的・精神的に何が可能かを考えることを大切にしています。
具体的にはパターンと呼ぶおよそ40通りの「動き」にテクニックと呼ぶ10個の「方法」を組み合わせてながら、対象者の自発運動に対して抵抗を与えて動きを引き出します。
それによりPNFのP(proprioceptive)である固有受容感覚(体の動きを感知する感覚)に正しい情報を入力させ、最終的に運動を修正できると考えています。
PNFは基本的に対象疾患を選びませんが、得意なことは「筋の反応スピードを高めたり、使えていない筋の反応を引き出すことで潜在能力を引き出すこと」であり、その結果が痛みの改善やパフォーマンスの改善につながると言えます。

現在PNFはアメリカはもちろん、欧米、南米、アジアの国々でも広く用いられている運動療法です。
国際PNF協会という国際団体が認定コースを行っており、理学療法士、作業療法士、医師を対象としています。もともと医師と理学療法士が開発したものなので、基盤には運動学や生理学、解剖学、運動学習理論など様々な医学的裏付けがあります。
そのため、日本では理学療法士を中心に全国の急性期医療から在宅医療、またはプロスポーツの分野でも広く用いられています。
また国際PNF協会の認定インストラクターは世界中に約100名程度が存在し、代表の松田現もアクティブに活躍しているインストラクターの1人です。


P:proprioceptive(固有受容性(器)・固有受容感覚)
N:Neuro muscular(神経筋)
P:Facilitation(促通・促進)
日本語では「固有受容性神経筋促通法」と訳します

P:proprioceptive(固有受容性(器)・固有受容感覚)
日本語では感覚受容器と感覚自体のどちらも意味します。
これは人間に存在する感覚でも深部感覚とも言われるものになります
深部感覚とは受容器が筋肉や関節など全身に存在し、目で見なくても身体の位置や動きが分かる感覚です。この感覚が鋭いとバランスが良くなり、動きが素早くなります。
「運動神経がいい」という表現は固有感覚が鋭いことを意味するとも言えます。

PNFは簡単に言うと、固有感覚を鋭くして神経−筋の反応を良く(促通)し、問題の改善を図るということになります。

もう少しわかりやすく説明しますと、、
運動は脳からの司令で筋肉を動かして生じるものですが、その筋や関節などに存在する固有感覚(深部感覚)受容器、また視覚や平衡感覚などの特殊感覚などから情報が瞬間的に脳に伝わり微調整を行って、また筋肉を動かしていくということを繰り返しています。
PNFの狙いは、筋肉を動かしたときの固有感覚受容器からの情報をより正しくより多く脳に伝達させることにあります。
脳から筋肉への伝達を変化させることで、いままで使えていなかった筋肉を認識したり、さらには姿勢はもちろん運動を修正することができると考えています。

そのため、PNFでは筋肉に抵抗をかけ筋収縮を促すわけですがその手段としてパターンとテクニックがあり、セラピストはそれらを駆使して施術をおこなっていきます。

具体的な例としては、筋肉隆々な人や身体の柔らかい人が万能かといえばそうではないように、痩せている方でも走ったりスポーツしたりしていますし、体の硬いスポーツ選手もいます。大事なのは筋肉の量や柔軟性だけではなく(もちろんそれなりには必要ですが)、働くべき筋肉がタイミングよく効率的に働くことであると考えます。
そのタイミングや効率(働く筋の種類や出力等)に関与するのがまさに固有感覚受容器からの情報であり、神経ー筋の連携なのです。
そして、もともとある神経と筋肉を使って感覚に働きかけることにより、運動を修正することからPNFは潜在能力を引き出せるということになるのです。

初回の流れ

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問診・評価から目標と問題点とその解決策を見出します
まずは、問診票を書いていただき、必要に応じ着替えをして頂きます。(ご持参いただくか、無料の貸し出しウエアをご利用下さい)
その後、担当者が今困っていることや体の状況、今後についてのご希望等をお聞きします。

そして実際に動いていただく中で反応を見ながら、柔軟性や筋力、姿勢や動作などを拝見し、全体的に評価して問題点を絞ります。
評価はなるべく数値など客観的なデータを取るようにしています。筋力計、筋電図、iPadによる動画や写真などを主に使用します。
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PNFアプローチの評価方法
問題点を絞りながら、根本解決を目指します。→例えば柔軟性であればどの筋の柔軟性が必要なのか、筋力であればなぜその筋力が必要なのか?など具体的な問題点に絞ります。
肉体的・精神的にもポジティブアプローチがPNFの基本です。→弱い身体部位にのみ着目するのではなく、強くて良い身体部位があればそれを利用するというのがポジティブアプローチです。
痛みや辛いことがありましたら無理に行うことはありませんのでお気軽にお伝え下さい。
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結果と身体の説明、今後の課題と自主トレーニングを指導します
最後に評価と施術を振り返り、セラピストのその時点での判断をお伝えします。
ご自身の体を知ることで、リハビリの効果は向上すると考えております。何か疑問を感じることがありましたらどんなことでもお気軽に聞いてください。
必ずしも全ての問題点が判明するわけではありませんので、医師に相談すべき内容であった場合などは病院への受診等を提案いたします。
体が変化を受け入れるには約1万回程度ので繰り返し学習が必要と言われています。よりリハビリの効果を持続させるためにも自主トレーニング方法をご希望に応じ指導させて頂きます。
自主トレーニングは忘れてしまわないように動画や写真に残し、後からメールで送信することも可能です。

施術例

痛みの緩和

70代 男性 変形性膝関節症

診察画像

困っていること
階段の下りで踏み込んだ時に左膝が痛い(NRS:8/10=10段階だと8という痛みの自己評価)

施術前
・筋力計:ふくらはぎの筋肉(以下腓腹筋)特に内側の出力が弱い (右:11.0kgf 左:3.1kgf)
・筋電図:腓腹筋内側の反応が遅い
・動作から:左足を踵からそ~っとついていた

腓腹筋内側を使いながら、働くタイミングを姿勢を変えながら学習して頂き最終的に階段降段時の痛みが(NRS:8→2/10)改善しました
動作もつま先から右とほぼ変わらないタイミングで不安なく降りることができました


評価を進める中で、膝を伸ばす筋や股関節周囲の筋力も弱さはありますが、筋力計の数値で大きく差があったのは腓腹筋の筋出力でした。ここは立位でかかとを上げる筋肉ですが同時に膝を曲げる筋肉の1つでもあります。
この筋出力が低下する原因はなにか、、、そしてなぜ膝に痛みが生じているのか
仮説として
そもそも膝に骨性の変形がある上に、腓腹筋は内外側あるうちの外側を主に使用し、それにより膝下が外向きにになり膝にかかる負担に偏りが出ていました。更に体重が乗るタイミングで膝を支える筋肉の一つである腓腹筋の筋収縮が遅れて、しかもその収縮は特に内側で不十分であり意識しても力が入りにくい状況でした。
そのため仮説として①膝周囲の固有感覚が低下②腓腹筋内側がうまく働けていない③膝の位置関係が変化している ために階段を降りる際、荷重時に膝で体重を受けた時痛みが生じてゆっくり降りているのではないかと考えました。
「腓腹筋内側の筋がタイミングよく筋出力を上げられるようになる」ことに的を絞って施術を進めました

実際施術ではベッド上、坐位、立位、ステップと徐々に負荷を上げながら、視覚刺激や聴覚刺激を入れつつ足底が接地した時に腓腹筋内側の収縮を引き出していきました
最終的に自分で腓腹筋内側の筋収縮を再現することができ、反応が遅れていたことも実感されてご自身で筋収縮のタイミングをある程度修正することができていました
それは筋力計(3.1kgf→8.1kgf)や、筋電図上でも客観的に改善を確認することができました

診察画像

その結果、最初に困っていた階段の降段も痛みがかなり軽減することができました
最後に本日の施術と体の状況を説明し、自主トレーニング方法を指導して終了となりました

野球肘[子供のスポーツ]

11歳(小学5年生)

困っていること
投球動作で痛みが出る バットを振っても痛みが出る

経過
半年前から時々痛みが出てきて、強くなってきたので整形外科を受診し野球肘の診断を受けると1ヶ月のノースローを指示されました。しかしもうすぐ1ヶ月経とうとしているがあまり状況が良くなっていないため、来所されました。

診察画像

姿勢や上肢の動きを評価して、なぜ野球肘になってしまったのかを検討しました。
まず、姿勢では右肩甲骨外転挙上位であることから、前鋸筋の出力低下が疑われました。また、肩関節内旋の可動域が大きく減少していました。(実際の投球動作は禁止中でしたので見ていません)

肩甲骨のアライメント異常に伴い体幹から上肢への運動連鎖が十分に働かずに肘への負担となったと考えました。簡単に言うと投げる時に身体を使わず手だけで投げているということです。

投球動作で必要とされる肩の内旋可動域を改善させ、肘を境に前腕と上腕がカウンターのように逆方向に動いていたので体幹、肩甲骨、上腕、前腕、手指の関係を学習してもらいました。最終的にご自身でも痛いときと痛くないときの身体の各部位の位置の違いや、どうしたら痛いのかを理解してもらうことができました。
1週間後再来所して頂き、そのときにはバットを振っても痛みはなく、体幹と上肢の運動連鎖も改善が見られ合計2回の施術で一旦終了となりました。

踵骨骨端症(シーバー病)[子供のスポーツ]

8歳(小学2年生)

困っていること
運動をするとかかとが痛い

経過
ミニバスと空手をしている子ですが左踵部に運動時痛が強く、整形外科を受診するも安静を指示され、その期間が終了してまた運動を始めるとまた痛くなるの繰り返していました。二次的に右股関節にも痛みが生じる事もあったようです。安静期間中に何か出来ることはないかと来所された。

診察画像 診察画像 診察画像

左ふくらはぎの筋肉(以下下腿三頭筋)外側頭の過活動により下腿が外側へ引かれていました。このため足部を中間位にすると左のみに足関節の背屈制限がありました。
下腿三頭筋の短縮は踵骨骨端核を後方へ引く力となるため、痛みが出そうな時は踵部を足底方向へ引くテーピングをすることを勧め、また下腿三頭筋外側頭のストレッチやマッサージもご両親に指導しました。

下腿三頭筋外側頭の過活動が生じた理由が身体の使い方にあるとは思いますが、今回は1回の体験施術でしたので痛みを取る方法を指導させていただきました。今後また痛みが再発したときは全身の評価も必要になってくるとは思いますが、その後の経過でご両親がマッサーシ等行っており痛みも出ずスポーツが行えているようなので経過観察となりました。

野球肘もシーバー病も運動をしている子どもにはよくある痛みです。休めば痛みは軽減するので、我慢してしまう子も多いですが、早期にケアをすれば意外と簡単に痛みが取れることも多いです。
運動ができる子ほど身体の成長に対して運動強度が強くなってしまう傾向にあります。将来の体のことを考えて早めのケアをお勧めします。